「総合周産期母子医療センター」は、切迫早産や持病のある妊婦を受け入れ、分べんなどを行う医療機関で、命を守る“最後の砦”とも言われています。
このセンターでの妊婦や新生児の受け入れの実情を調べるため、NHKが国に情報公開請求を行い、全国115か所の情報を入手しました。
それによりますと、NICUと呼ばれる新生児の集中治療室が満床であることを理由に、緊急搬送の受け入れを断らざるをえなかったケースが、2022年度に母体で1458件、新生児で464件のあわせて1922件あったことがわかりました。
こうした受け入れを断らざるをえないケースは全国の総合周産期母子医療センターの6割近くで起きていて、比較的、大都市に多く見られます。
また、NICUの病床利用率をみると、平均して90%以上あるセンターは、全体の4割にあたる46か所ありました。
日本周産期・新生児医学会の元理事長で、埼玉医科大学総合医療センターの田村正徳名誉教授は「搬送を断られた妊婦でも最終的にはどこかの医療機関で受け入れられているとみられるが、医療につながるまでに時間がかかってしまうと、妊婦や赤ちゃんの安全が脅かされるリスクが高まる」と指摘しています。
その上で、「NICUの病床は拡大してきたものの、そこで働く医師が減っていることがひっ迫の大きな要因だ。専門の医師をすぐに増やすことは難しいため、まずは県域を越えた広い搬送システムの枠組みを検討するとともに、医療行為の一部を医師に代わって担えるいわゆる特定看護師などの養成を進めるといった対策を早急に検討する必要がある」と話しています。
厚生労働省は「一時的に搬送の受け入れが困難な場合には、自治体が配置する搬送コーディネーターなどによりほかのセンターへの受け入れ調整を進めている。国としては引き続き都道府県と連携して、受け入れ体制の確保や受け入れ調整を円滑に進めるとともに、今後の周産期医療体制のあり方などについて、関係者からヒアリングを行いながら、検討していきたい」とコメントしています。